クラウド会計で経理はどこまで自動化できる?進め方と失敗しないポイントを解説

「クラウド会計を導入して、経理業務をもっと自動化したい」
「クラウド会計を導入したものの、思ったより手作業が残っている」
「今使っている会計ソフトやSaaSが、自社の業務に合っているのか分からない」
クラウド会計の導入・見直しを検討する企業から、このようなご相談をいただきます。
クラウド会計を活用すれば、銀行口座やクレジットカードの明細取得、仕訳入力、証憑のデータ化など、経理業務の多くを自動化できます。近年は、AIを活用した自動仕訳や証憑の読み取りなども進化し、自動化できる範囲はこれからも広がっていくでしょう。
一方、クラウド会計を導入しただけでは、経理業務のすべてを自動化できるわけではありません。どこまで自動化できるかは、利用するサービスや業務の設計によって変わります。
本記事では、クラウド会計で自動化できる業務と人に残る業務、AIに任せられる業務を整理。これから導入する企業はもちろん、既存の会計ソフトやSaaSを見直したい企業に向けて、自動化を成功させるための進め方を解説します。
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クラウド会計とは?従来の会計ソフトとの違い
クラウド会計とは、インターネット上で利用する会計ソフトを指します。従来のオンプレミス型の会計ソフトと比べ、銀行口座やクレジットカード、経費精算などの外部サービスと連携しやすく、取引データの取得から仕訳までを効率化できる点が特徴です。
つまり、クラウド会計の導入は、経理業務全体をシステムでつなぎ自動化するための基盤となるのです。ただし、導入するだけですべての業務が自動化されるわけではありません。どこまで効率化できるかは、利用するサービスと業務設計によって変わります。
では、クラウド会計では具体的にどのような業務を自動化できるのでしょうか。
クラウド会計で自動化できる業務
クラウド会計の自動化で特に効果が大きいのは、入力・転記・データ取得などの定型業務です。銀行口座やクレジットカードとの連携、仕訳の自動作成などによって、これまで手作業で行っていた業務を効率化できます。
■代表的な自動化の対象業務とその方法
業務 | 自動化の方法 |
銀行口座の明細取得 | 銀行口座を連携し、入出金データを自動取得 |
クレジットカードの明細取得 | カードを連携し、利用明細を自動取得 |
領収書・請求書のデータ化 | AI-OCR(人工知能光学文字認識)で日付・金額・取引先などを読み取り |
仕訳入力 | 過去の取引や登録したルールをもとに仕訳を自動作成 |
経費精算 | 経費精算システムと連携し、仕訳処理を効率化 |
請求・入金管理 | 請求管理サービスなどと連携し、データを自動反映 |
入金消込 | 入金データと請求情報を照合し、消込作業を効率化 |
データチェック | 重複や異常値などをシステム上で確認 |
たとえば、銀行口座をクラウド会計に連携すれば、入出金データを自動で取り込めます。さらに仕訳ルールを設定しておけば、過去の取引パターンに応じた仕訳の自動作成も可能です。
一方、イレギュラーな取引の判断や自動仕訳の確認、ルールのメンテナンスなど、人による対応が必要な業務も残ります。
クラウド会計で自動化できない業務
クラウド会計を導入しても、すべての経理業務を自動化できるわけではありません。取引内容の判断や例外処理、自動仕訳の確認、ルールのメンテナンスなど、人による対応が必要な業務は残ります。
次のような業務は、自動化だけで完結させるのが難しい領域です。
勘定科目の最終判断や、イレギュラーな取引の処理
新しい取引先・取引パターンが発生した際の仕訳ルールの追加
自動仕訳の内容確認や、ルールのメンテナンス
承認や内部統制、税務・決算に関する最終確認
月次の数字の分析や、経営への報告・提案
なかでも見落とされやすいのが、自動仕訳のルールを継続的に見直す業務です。取引内容が変われば、既存のルールでは正しく処理できないケースも出てきます。
そのため、クラウド会計の自動化では「何を自動化するか」だけでなく、自動化した後に誰が確認し、例外に対応し、仕組みを維持するのかまで決めておくことが重要です。
■AIで自動化できる範囲も広がっている
AIの進化により、証憑の読み取りや仕訳の提案など、業務の自動化できる範囲も広がっています。一方で、取引内容の判断や最終確認までAIに任せられるとは限りません。
AIを活用する際も、どこまでをAIやシステムに任せ、どこからを人が担うのかを整理しておきましょう。
会計ソフトだけでなく経理業務全体を連携して自動化する
会計ソフトの自動化機能を活用しても手作業が減らない場合は、会計ソフトの前後にある業務に原因があるかもしれません。
たとえば、請求書の受け取りは紙、経費精算はExcel、請求・入金管理は別のシステムという状態では、各所で入力や転記が発生します。会計ソフトだけをクラウド化しても、経理全体の自動化にはつながりません。
自動化で目指すのは、請求・経費精算・請求書受領・入金管理・会計まで、経理業務全体をつなぎ、データが人の手を介さずに流れる状態です。
そのためには、まず現在の業務を一度整理しましょう。
どの業務を、どのSaaSで処理しているか
どこに手入力や転記、Excelや紙で行う業務が残っているか
SaaS同士が連携できているか
ここまで整理すると、「会計ソフトを入れ替えるべきなのか」「周辺のSaaSを見直すべきなのか」「そもそも業務フローを変えるべきなのか」が見えてきます。
すでにクラウド会計を導入している企業も同様です。思ったほど自動化できていないなら、すぐに別の製品へ入れ替えるのではなく、現在の業務とSaaSの組み合わせの見直しから始めましょう。
【クラウド会計を導入した企業向け】見直したい5つのポイント
クラウド会計を導入した後も手作業が残っている場合は、会計ソフトを入れ替える前に、現在の設定や業務フローを確認しましょう。
特に確認したいのは、次の5つです。
見直すポイント | 確認すること |
手作業 | 会計ソフトへの入力・転記が残っていないか |
自動仕訳 | 仕訳ルールが適切に設定されているか |
SaaS連携 | 請求・経費精算などと連携できているか |
Excel・紙 | 会計ソフトの外で管理している業務が残っていないか |
運用 | 特定の担当者にしか分からない作業がないか |
たとえば、自動仕訳の機能があっても、ルールが十分に設定されていなければ、毎回の確認や修正が必要になります。また、会計ソフトと周辺SaaSが連携していなければ、別の場所で入力や転記が発生するケースもあります。
こうした場合、原因は会計ソフトそのものではなく、設定やSaaSの連携、業務の進め方にある可能性も。
それでも手作業が減らない場合は、現在の会計ソフトや周辺SaaSが自社の業務に合っているかを再検討しましょう。すぐに製品を決めるのではなく、現在の業務と必要な機能を整理したうえで、SaaSの入れ替えを検討することが大切です。
【これからクラウド会計を導入する企業向け】押さえるべき5つのステップ
これからクラウド会計を導入するなら、製品を先に決めるのではなく、現在の業務整理から始めましょう。基本的な進め方は次の5ステップです。
ステップ | やること |
1.業務を整理する | 現在の経理業務を洗い出し、手入力・転記・Excel・紙などが残っている箇所を確認する |
2.自動化する業務を決める | 定型的で繰り返し発生する業務から、自動化する範囲を決める |
3.SaaSを選定する | クラウド会計だけでなく、請求・経費精算など関係するSaaSとの連携も含めて選ぶ |
4.設定・移行する | 勘定科目や仕訳ルールを設定し、必要なデータを移行する |
5.運用・改善する | 未処理や自動仕訳を確認し、実際の取引に合わせてルールを調整する |
重要なのは、「どの製品を入れるか」から考えるのではなく、「どの業務を、どこまで自動化したいか」から逆算することです。
業務整理→自動化する範囲の決定→SaaS選定→導入→運用という順番で進め、クラウド会計の活用を進めましょう。
自動化しても残る業務は「人+外部リソース」で回す
クラウド会計やAIを活用しても、すべての経理業務が自動化されるわけではありません。取引内容の判断や例外処理、仕訳ルールの確認・修正、決算対応など、人が担う業務は残ります。
そこで重要になるのが、仕組み・社内担当者・外部リソースの役割分担です。定型処理はクラウド会計やAIに任せ、判断や承認、分析は社内で担う。チェックやルールのメンテナンスなどは、外部の実務リソースを活用する方法もあります。
担い手 | 主な役割 |
クラウド会計・SaaS・AI | データ取得、入力、仕訳などの定型処理 |
社内担当者 | 取引の判断、承認、例外対応、数字の確認・分析 |
外部リソース | 定型処理、チェック、仕訳ルールのメンテナンスなど |
自動化で作業量を減らし、それでも残る運用は外部のリソースで回す。こうすれば、担当者は勘定科目の判断や数字の分析といった、社内で担うべき業務に集中できます。
また、すべての業務を固定的に分担するのではなく、繁忙期だけ外部リソースを活用するなど、業務量に応じた使い分けも可能です。
【事例】クラウド会計・SaaS導入で経理を効率化した例
クラウド会計やSaaSの導入では、ツールを選ぶだけでなく、既存業務の整理や導入後の運用まで設計することが重要です。実際にレジリエントが支援した事例をご紹介します。
■事例1:A社-経理業務の可視化から最適なSaaSを選定・導入
課題
経理業務のDXが進まず、情報が分散していたため、業務の集約・可視化が難しい状態でした。請求書の漏れや入金確認、消込処理などにも支障が生じ、データ入力などの作業負担も増えていました。
支援内容・効果
経理業務のフローを詳細にヒアリングして可視化し、業務に適したSaaSを選定・導入。初期設定から具体的なオペレーション設計まで支援しました。結果として、業務の生産性が向上し、分散していた情報の集約・可視化を実現。業務手順の標準化にもつながりました。
POINT: 業務改善・フロー構築・業務の標準化
■事例2:B社-SaaSの入れ替えと給与計算業務のBPOを一気通貫で支援
課題
既存で利用していたSaaSの利用料が高額だったため、コスト削減を目的にシステムの入れ替えを検討していました。新しいSaaSの選定だけでなく、入れ替えに伴う給与計算業務のアウトソーシングまで一括して任せられるパートナーを求めていました。
支援内容・効果
よりコストを抑えられる新たなSaaSを選定・導入するとともに、給与計算業務を丸ごとアウトソーシング。SaaSの入れ替えと業務の外部化を一気通貫で支援し、トータルコストの削減と業務効率化を同時に実現しました。
また、社労士との連携もスムーズに行える体制も構築しています。
POINT: SaaS選定・業務のアウトソーシング・コスト削減
クラウド会計の自動化に関するよくある質問
■Q1.クラウド会計を導入すると、経理業務はどこまで自動化できますか?
A.銀行口座やクレジットカードの明細取得、証憑のデータ化、仕訳入力、経費精算など、定型的な業務を中心に自動化できます。
一方で、取引内容の判断や例外処理、承認、決算など、人による確認が必要な業務も残ります。
■Q2.クラウド会計を導入しても手作業が残るのはなぜですか?
A.クラウド会計を導入しただけでは、これまでExcelや紙で行っていた作業、手作業での確認などがそのまま残るケースもあります。
導入後に業務フローを見直し、クラウド会計や周辺SaaSとの連携、自動仕訳のルールなどを整えれば、手作業として残っていた業務をさらに自動化できる可能性があります。
■Q3.AIを使えば、経理業務をさらに自動化できますか?
A.AI-OCRによる証憑の読み取りや仕訳候補の作成など、AIの活用により自動化の範囲は広がっています。
しかし、最終的な判断や確認まで任せられるとは限りません。AIを含めたツールの機能と、自社の業務フローを組み合わせての設計が重要です。
■Q4.おすすめのクラウド会計ソフトはありますか?
A.一概に「この製品が最高」とは言えません。
会計ソフト単体の機能だけでなく、請求・経費精算・請求書受領など、周辺SaaSとの連携性まで確認することが重要です。現在の業務だけでなく、導入後の業務フローも想定し、自社に合ったサービスを選びましょう。
■Q5.クラウド会計の初期設定やデータ移行は大変ですか?
A.初期設定やデータ移行には、勘定科目や仕訳ルールの設定、過去データの整理・移行など、一定の準備が必要なため、一時的に業務負担は増加します。
実務を止めずに導入を進めたい場合には、業務を一部外部事業者に切り出すなどの選択肢がおすすめです。
まとめ|クラウド会計の自動化は「導入」より「業務設計」が重要
クラウド会計を活用すれば、明細取得や仕訳入力、証憑のデータ化など、経理の定型業務を効率化できます。AIの活用も進み、自動化できる範囲はさらに広がっています。
一方で、クラウド会計を導入するだけでは、経理業務全体の自動化にはつながりません。これから導入する場合は業務整理から、すでに導入している場合は業務フローやSaaS連携の見直しから始めましょう。
クラウド会計を「入れて終わり」にせず、人・SaaS・AIの役割まで含めて業務を設計する。これが、クラウド会計を最大限に活用するポイントです。
「クラウド会計を入れたのに、手作業が残っている」
「初期設定やデータ移行で、つまずいてしまった」
「仕訳ルールのメンテナンスを担える人がいない」
そういったお悩みをお持ちなら、ぜひ一度ご相談ください。
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